秋の夜、一人酒をのむ時、ふと思い出される歌が私にはあります。
「白玉の 歯にしみとほる秋の夜の 酒はしづかに 飲むべかりけれ」 若山牧水
私の愛する名歌です。(酒好きの方なら良くお分かりかと思います。)
彼の酒好きは、半端なものではなかったようです。
残暑厳しい9月に亡くなりましたが、亡がらは、全然傷まなかったという話。まさにアルコール消毒済み・・・。
とでも言う所でしょうか。
「歯にしみとほる」と言う感覚は、良く分かるような気がします。
五臓六腑ではなく「歯」にしみとほる。
この感覚は、「しずかさや 岩に染み入る 蝉の声」と同じような気がしますが・・・。
そう思い詠んでみると「歯」、だからこの一首は素直に私の心にしみいってくるのでしょう。
「酒仙人」がにたりと笑う顔が、目に写る様でもあります。
食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋・・・。くれぐれも痛飲の秋となりませぬように。
[若山牧水]
1885〜1928 宮崎県生まれ、本名は繁、早稲田大卒。酒と恋と旅に生きた漂白の詩人。 |